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来日演奏家の思い出

 投稿者:ヘ音記号  投稿日:2017年11月 3日(金)14時48分15秒
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  昭和28年(1953年)4月。日本の音楽界は沸き返っていました。今から64年前のことです。ピアノの巨匠ギーゼキングと、バイオリンの名手シゲティが同時に来日していました。このチャンスをとらえ、二人の共演をという声が高まりました。その寸前までいきながら、実現は成らず残念でした。だが、幸運にも両者の演奏会を聴くことができました。

シゲティ(1892.9.5~1973.2.19 )は長身のハンガリー人。ギーゼキング(1895.11.5~1956.10.26)はずんぐりタイプのドイツ人。どちらも魅力的な音色で人を惹きつける演奏家でした。先行して来日のシゲティ初日演奏は3月5日。カルロ・ブゾッティのピアノ伴奏でラヴェル、バルトーク、バッハ、シューベルト等、熱演に継ぐ熱演でした。ついで、4月になると、東京交響楽団との共演でモーツアルトとベートーベンの協奏曲を演奏してくれました。詳しい記録がないので、指揮者が誰だったか、モーツアルトの何番だったかは忘れました。とにかく、これらの演奏が大変な評判であったため、帰国前に後楽園スタジアムで特別演奏会をやるという、おまけがついたほどです。内野席が200円というのも大受けでした。しかも、東響のオケ伴でメンデルスゾーンの協奏曲と、何日か前に亡くなったばかりのプロコフィエフ追悼を兼ねて、彼のバイオリン協奏曲1番を聴かせてくれました。ただし、内野の真ん中での演奏となれば、音響はよくないし、マイクとスピーカーを通した怪しげな音でしたが、それでも満足そうなお客さんの拍手となりました。

ギーゼキングのピアノ演奏も2回聴きました。シゲティに優る名演と思ったほどでした。日比谷公会堂の初日演奏は、運よく学生用の当日売り立見席(200円)が手に入りました。3階の通路階段に座って聴いた記憶が残っています。バッハ、ベートーベン、シューマン、ドビュッシーが弾かれ、なかでも、ベートーベンの最後のソナタ32番や、ドビュッシーの組曲「子供の領分」に興奮したのを覚えています。音の強弱幅が大きいこと。ペダルの効かせ方が効果的なこと。一つ一つの音のニュアンスや、和音それぞれに微妙な変化が感ぜられること等、これが本物のピアノの音だと思いました。さらに期待した2回目のコンサートは1等席を確保できたので、2階の前の方で聴くことができました。しかも、大変欲張ったプログラムで、ドビュッシーの前奏曲集1,2巻全曲と、ラヴェルの組曲「鏡」をバリバリ演奏してくれました。ピアノの音がこれほど心に強く響いた経験はいまだにありません。

1950年代、EMIの録音に、ギーゼキングの名演奏がたくさん残されていますが、なかでもドビュッシーの前奏曲集、全24曲の録音はモノーラルCDながら最高のものです。また、youtubeの1956年ライブ録音でラヴェルの鏡を聴くことができます。下記URLをチェックしてご覧ください。
    https://www.youtube.com/watch?v=YWXpQYGzQf
 
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